危険な孤立出産

医療関係者がいない中でのお産を「孤立出産」と呼びます。

これは母体にとっても赤ちゃんにとっても危険な行為です。
例えば平安時代には100人中20人の妊婦さんは亡くなっていたと言われています。
今から120年前の日本では約250人に1人の死亡。
現代のアフリカでは約200人に1人の死亡です。

この数字は産婦人科の現場にいる者としては信じられないものです。
現代の日本では約29400人に1人の死亡です。
私は産婦人科医になって24年、慈恵病院に勤めて17年になりますが、これまで妊婦さん死亡に遭遇したことがありません。
それほど希なことです。

慈恵病院では1ヶ月に140人前後の女性がお産をされますので、120年前の日本や現代アフリカの死亡頻度なら、慈恵病院だけで1ヶ月半~2ヶ月に1人の母体死亡が発生することになります。

孤立出産は赤ちゃんにとっても危険です。孤立出産の末に新生児を遺棄した事件をたどると、出生時にはすでに赤ちゃんが死亡していたケースが多々あります。これは母親の申告に基づくだけでなく、司法解剖でもそれが裏付けられています。

慈恵病院では年間1500~1700人の赤ちゃんが生まれますが、臨月(妊娠36週以降)に入って突然胎児がお腹の中で亡くなるケースは2~3年に1件です。子宮内胎児死亡の発生率を比較すると、病院内出産では考えられないほど孤立出産では多発しているように思います。

「こうのとりのゆりかご」に赤ちゃんを託す女性のほとんどは孤立出産をしてしますのですが、何とか病院内での出産を実現できないか願うばかりです。

内密出産スタート!?

報道では内密出産がセンセーショナルに取り上げられているように思います。今にも多くの内密出産が発生するかの様です。しかし実際に内密出産や匿名出産になるケースは年間に1~2件ではないかと思います。
しかも、その時期も不明です。
来月かもしれませんが、再来年かもしれません。

妊娠相談の中で、私が最も危機感を感じるのは、「誰にも知られずに赤ちゃんを産む」と言う妊婦さんです。これを孤立出産と呼びますが、母体にとっても赤ちゃんにとっても危険な行為です。

お産の痛みは手の指を切断する痛みに匹敵するとも言われています。
それを誰にも知られずに一人で完遂するには相当な覚悟が要るはずです。
それをしてしまう妊婦さんは、(少なくとも本人にとっては)切羽詰まった事情を抱えています。

「絶対に知られたくない、困る!」のです。

これまで慈恵病院では匿名を前提とした分娩をお断りしていました。
この方針は慈恵のみならず日本国内の産婦人科すべてに当てはまることです。
しかし、これでは「事情を抱えた妊婦さん」との距離を縮めることができません。

「それならいいです」ということで、以後連絡が途絶えてしまったケースが少なからずありました。一方、乳児の遺棄・殺人のニュースが流れると、「あの時のケースではなかったか?」と心配します。

孤立出産をしてしまいそうな女性には、まず彼女たちを認めて受け入れることが大事です。母子の安全が最優先です。

「子どもが自分の親を知ることがないままなのは、かわいそう」
「安易な育児放棄を助長する」
「望まない妊娠をしたのだから、責任をもって名前を明かし育てるべき」

このようなご意見は「こうのとりのゆりかご」と同様に内密出産や匿名出産にも付いて回るでしょう。しかし日本の社会が彼女たちに歩み寄らなければ、危険な孤立出産へ走らせることになり、結果として赤ちゃんの不利益につながります。

最近は内密出産という言葉が一人歩きしているようにも思えますが、目指しているのは匿名妊婦さんの受け入れです。これは内密出産とは別です。つまり最初は匿名でも、理解して安心すれば匿名を撤回する妊婦さんがいるはずです。実際に内密出産で先行するドイツではその傾向が認められています。

彼女たちを認め、受け入れ、助ければ、彼女たちの多くが安心して心を開いてくれるものと信じています。

もちろん一部の妊婦さんは最後まで匿名を貫き通すかもしれません。
それでも彼女たちを信じて、安全な出産を実現させるべきではないでしょうか。

ドイツのように法整備がない中での内密出産や匿名出産には、多くの問題が待ち受けていると思います。試行錯誤の作業だと思いますが、行政の方々にも相談を重ねながら、新たなセーフティーネットの構築を目指していきたいと思います。

 

 

無痛分娩のビデオ作っています

当院では月に1回無痛分娩の説明会を行っていますが、予定の合わない妊婦さん・ご主人様がいらっしゃって、皆さんに情報提供ができないのが難点でした。
そこで無痛分娩の説明ビデオの制作を始めました。

もともと説明会では1時間以上かけてお話ししますが、これをテーマ別に分けて動画を作り、病院のホームページやYouTubeにアップします。
11月末には完成すると思いますので、無痛分娩に関心をお持ちの方は是非ご覧下さい。

それにしても、動画の収録は素人にとって大変です。

「伝えるべき内容を忘れずに伝える」
⇒ カメラを前にすると、話すべきことが頭から抜けてしまう

「視聴する人にわかるようにゆっくり、はっきり話す」 ⇒ 早口の私は自己嫌悪(T_T)

「笑顔で」 ⇒ 緊張すると笑顔が出ない

「放送部に、演劇部に入っていれば良かった」
そんなことを思いながら収録を続けています。

『医者の告白』より

私が大学生の頃に読んだ本です。
この中の一節、分娩のシーンを思い出しましたので抜き出してみました。
医学生が初めて分娩に立ち会った時の体験を描いています。
(漢字・ひらがなの表現は原文のままです)

私がはじめて出産に立ちあったときのことを、いま、まるで今日のできごとのようにはっきりと思いだす。

産婦は郵便局員の若い妻で、二度目の出産であった。彼女はあおむけに横たわり、ふくれあがった腹をむき出しにし、がっくりと両手をたれ、ひたいには大つぶの汗が流れていた。陣痛が襲ってくると、膝を弓のようにまげ、歯をくいしばってうなり声をだすまいと骨折ったが、しかしどうしても、うならないわけにはいかなかった。

「まァ、まァ、奥さん、もうすこしのしんぼうですよ、ね!」平気な落ちつきはらった調子で担当医は産婦をなだめた。

夜は無限に長かった。産婦はもうがまんしていなかった。泣声をあげ、身をふるわし、指をおりまげて、病院中にひびきわたるほどにうなりたてた。そのうなり声は廊下をしんどうさせて、それからどこか遠くの天井の方に消えていった。

ある特別に強かった陣痛のあとで、産婦は担当医の手をしっかりつかみ、ぐったりとした蒼白なおももちで、痛ましい祈るようなまなざしを彼に向けた。

「先生、どうぞおっしゃって下さい、私、死ぬんじゃないでしょうか?」彼女は苦悩をこめてたずねた。

中略

ようやく、その夜おそくなってから、出産は終わりにちかづいた。まず小さな頭があわられた。産婦の全身は、自分から子供を押しだそうとする必死の努力でひきつった。赤児はついにでた。左がわの首すじに大きな血まじりの瘤をもち、ぶかっこうな長い頭蓋をもってこの世にでた。
産婦はウトウトねむりにおちた。

「なに、かるいお産さ、だからかくべつの興味もありゃしないよ、」と担当医はいった。

これがなんのかわったところもない≪ふつうの≫ことであった!……しかも問題は≪文明≫が出産を一そう困難なものとした、という点にあるのではない。女性はつねにひじょうな苦悩をもってお産をするものである。すでに古代の民が、この不可思議なことにおどろきの眼をみはり、これを神の呪としてしか解しゃくすることができなかったではないか。

1900年に発表された作品ですので、当時の医療状況と現在はずいぶん異なりますが、分娩については大きく変わらないかもしれません。
陣痛の痛みを「自然のもの、当たり前のもの」と考える人は多いと思いますが、トラウマになるほど辛い思いをしながら出産する女性もいます。

ヨハネスブルグ ~世界で最も危険な都市!?~

ネットやガイドブックの情報では、南アフリカのBaby Boxがあるヨハネスブルグは相当危険な都市なのだそうです。戦時下にある地域を除けば、世界で最も危険な都市とも書いてあります。
日本の熊本とはあまりのギャップです。
熊本で犯罪に巻き込まれるなんて、日常にはまず考えられないですから。
熊本で空き巣、自動車・自転車の盗みはあり得ますが、強盗でも発生したら大ニュースです。
ちなみにヨハネスブルグでは1日の殺人事件死亡者が50名だそうです。

ヨハネスブルグを案内して下さった通訳のご夫妻(日本人)によれば、安全のためにバスや電車などの公共交通手段は使うべきではないそうで、ひたすら自家用車で移動しました。それも危険な地域を避けるために、わざわざ遠回りしてながらハイウエイを走りました。                                                                                                                                                    

前を走っている白いワゴン車は乗り合いタクシーです。
通称「ブラックタクシー」で運賃は安いものの、「絶対お勧めしない」と言われました。
降車後に同乗のお客に後を付けられて、強盗に遭うかもしれないそうで‥

近くで見ると、トヨタのハイエースで、親しみもわくブラックタクシーですが。

交差点付近では物売りの姿をよく見かけました。
彼はDJだそうで、自分で作ったCDを売っていました。
写真を撮らせてくれることを条件に1枚購入しました。
(いくらだったかは忘れました)
笑顔で元気そうですが、とても痩せているのが気になりました。

貧困は黒人だけではありません。
白人も道路の隙間を縫って物売りをしています。
南アフリカと言えば、アパルトヘイトで黒人が差別されているイメージが強いですが、近年はリッチな黒人もいればホームレスの白人もいるそうで複雑です。

南アフリカに行ってきました

遅くなって恐縮ですが、6月に南アフリカのBaby Boxを見学してきましたのでご報告します。

まずは久しぶりの国際線搭乗報告です。
利用したのはアラブ首長国連邦に本拠地を置くエミレーツ航空です。
関西国際空港⇒アラブ首長国連邦のドバイ国際空港⇒南アフリカ、ヨハネスブルグのタンボ国際空港と乗り継いでの長旅でした。

エミレーツ航空のCAさんは出で立ちからしてアラブの雰囲気いっぱいです。
ちなみに上の写真にはビジネスクラス、ファーストクラスの表示がありますが、実際に乗ったのはエコノミーです^_^;

機体はエアバスA380!
世界最大の旅客機を目の当たりにしてワクワクしながら撮影しました。
小学生の頃、熊本上空をジャンボジェットが飛来してきた時や高校生の頃コンコルドを見た時の興奮です。
同行した娘にはピンとこなかったようですが‥

往路は最前列に座らせてもらいましたので、エコノミークラスなのに足を伸ばせました。
ただ、この席は、「文書または図で示された緊急避難に関する英語の指示を読んで理解でき、口頭による乗務員の指示を理解できること」「他のお客様に対して情報を口頭で、適切に伝えることができること」が条件だそうで、「この席に座ってもだいじょうぶ?」と後ろめたい気持ち半分でした。

私の座席の前はご覧のように広い通路です。
右手前の階段からは2階のビジネス・ファーストクラスに通じています。

離陸前の操縦室はドアが開いていて、私の座席から正面にはコクピットが覗けました。
私は感激しながら見つめていましたが、これも娘には理解できなかったようで(T_T)

ドバイ国際空港に到着したのが午前4時でしたが、空港は人であふれていました。
まさに「眠らない空港」です。

空港内のホテルには、宿泊客でなくても利用できるシャワールームがあって、これを利用しました。関空⇒ドバイ10時間、ドバイ待機6時間、ドバイ⇒ヨハネスブルグ8時間と、計24時間の往路でしたので、シャワーは助かりました。
タオルもアメニティもしっかり完備で快適でした。
利用料金は4000円位だったと思います。
高いですが、無料のシャワーは空きがなかったですし、「ドバイは高い」と聞いていましたので、やむなしの選択です。

機内食は日本人に馴染みにくい内容でした。
(細長いお米が出たりなど)

美味しかったのは、ドバイ空港で食べたフイッシュ&チップスです。
イギリス料理ですが、白身魚(タラ?)の身がふっくらしていて良かったです。

以上、とりあえず旅路の報告です。
次は本題の南アフリカをアップします。

本日の病院ごはん 7月30日

火曜日は私の当直担当が多いのですが、手術日でもありますからバタバタです。
手術が終わったら夕方の外来に向かいます。

本日の夕食では、婦人科手術をお受けになった患者さんの術後食と同じ物をいただきました。

 

「カレイの野菜あんかけ」は白身がふっくらとして美味しかったです。

 

「オクラのゼリー寄せ」は、ひんやりと冷たくて暑い季節にぴったりです。

 

こちらは、「ナスの湯葉あん」です。
家庭で湯葉を使った料理を作る事はなかなかないですが、当院の厨房にはベテランの和食調理人がいますので普通に提供してくれます。

 

「とり天」です。
外はサクサク、お肉はジューシーでした。

 

私の当直食にはピザのオマケを付けてくれました。
マリア館の人気メニューで、「ポテト明太ピザ」と「トマトとベーコンのピザ」のハーフ&ハーフです。

お腹いっぱいになりました。
体重が2㎏くらい増えたかも‥

 

本日の病院ごはん 7月9日

今晩の当直食は手術前後の患者さんに召し上がっていただく夕食バージョンです。
マリア館のお産後メニューに比べるとボリュームは軽めですが、それでも男性の私でも十分な量です。

 

「青梗菜(チンゲンサイ)とエリンギ炒め」

 

「茶碗蒸し」 小っちゃいですがカニ付きです。

 

「刺身こんにゃく」 涼しげで夏にぴったりな一品です。

 

メインは「豚肉の青じそ風味揚げ」

 

デザートは、「甘夏あんのくず包み」
くずの皮にはキウイフルーツソースで色づけしてあるそうです。
中のあんは甘夏で甘酸っぱい風味に仕上げてありました。

今日も美味しくいただきました。

今晩も切迫早産、切迫流産の妊婦さんが夜間外来に見えていますが、緊急事態はなくて比較的落ち着いた夜です。

 

本日の病院ごはん 7月6日

今晩は当直です。

マリア館の夕食が用意されていました。
『九州うまいもの御膳』だそうです。

カツオのたたき(鹿児島)

ミニうな丼(福岡 柳川)

団子汁(熊本)

もずく(沖縄)

中華大学芋(長崎)

椎茸とろろそば(大分)

チキン南蛮(宮崎)


イカシュウマイ(佐賀 呼子)

アップするのを忘れましたが、「熊本野菜 長茄子 レンコン」も盛ってあります。
よく集めたものだと感心します。
もちろん美味しい料理の数々です。

メニューを考案した栄養士の皆さん、たくさんの品数を提供してくれた調理師さん、おごちそうさまでした。