これが死体遺棄罪に当たるのか?

7月20日(火)、ベトナム人実習生乳児死体遺棄事件の判決が出ました。
5月17日に投稿した「気の毒です」の女性の裁判です。
懲役8ヶ月、執行猶予3年でした。

弁護団のみならず、傍聴人、報道関係者の評価は「検察劣勢で遺棄罪を立証できていない」「よくこれを起訴する気になったものだ」というものでした。
関係者は楽観的に考えていました。
私も、これで有罪はないでしょうと思っていたものですから、判決の知らせを聞いて驚きました。

判決文を見ると、「被告人がその頃出産したえい児2名の死体を段ボール箱に入れた上、自室に置き続け、もって死体を遺棄した」とあります。
死産した2名の赤ちゃんに対して彼女が行った行為は、

・部屋にあった小さめの段ボール箱にタオルを敷き、その上に赤ちゃんを寝かせ、          その上からタオルをかけた。

・赤ちゃんたちには「コイ」「クォン」という名前を付け、赤ちゃんたちへのお詫びの言葉と、「ゆっくり休んで下さい」というメッセージを書いた紙を赤ちゃんのご遺体に添えた。

・ご遺体の入った段ボールを自宅のタンスの上に置いた。

というものです。

判決文では「国民の一般的な宗教的感情を害した」ことが懲役8ヶ月の理由として述べられていますが、果たしてそれに値する行為なのでしょうか?
赤ちゃんのご遺体をゴミ集積所に置いたり、トイレの便器に放置したりすれば、尊いご遺体の尊厳を傷つけたということで、罪に問われてもやむを得ません。
しかし彼女の行った行為は、ご遺体の遺棄ではなく安置と見なすのが常識的な判断です。
また、長期間自宅に置いたままにすれば罪に問われるかもしれませんが、今回は出産してから、病院で出産の事実が明らかになるまで約24時間しか経っていません。

私は約10年前から全国で発生する赤ちゃんの遺棄・殺人事件をネットニュース上で見続けてきました。その中でも今回の事件で被告が行った行為は優秀です。出産直後の疲れ切った体と、2人の赤ちゃんの変わり果てた姿を目の当たりにする精神的なショックを抱えながら、赤ちゃんへのメッセージを添えてご遺体を安置したのですから。

これで有罪なら、自宅で死産した女性たちのほとんどが罪に問われることになります。そして、これがネットを通じて広まれば、自宅で死産した女性たちは逮捕されることを恐れて、ご遺体を隠してしまう恐れがあります。

今回の判決は犯罪を誘発しかねない事態で、今後も各地で発生する孤立出産に暗い影を落とす形になりました。