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NHKで放送された特別養子縁組の実態

NHKの『クローズアップ現代』で、ネットによる特別養子縁組が取り上げられました。

2016年11月21日(月)放送。「生んでくれたら最大200万円援助」。今、ネットを活用した養子縁組のあっせんが波紋を広げている。実の親、養子を希望する夫婦から登録を受け付け、やりとりの大半をSNSで行うなど、手続きを大幅に効率化している。NPOには希望者が殺到する一方、「人身売買では」と批判の声も。子どもにとって“希望”と呼べる養子縁組をどう実現するのか?賛否渦巻く現場を取材する。

情報源: 賛否噴出 ネットで“赤ちゃん”をあっせん!? – NHK クローズアップ現代+

この番組では、千葉と大阪の特別養子縁組あっせん業者が登場します。両者ともに私が昨年接触を試みた人たちでした。

きっかけは、「赤ちゃんポスト」というキーワードです。
慈恵病院はBaby Boxの国際シンポジウムを開催するプランを立てています。
世界のBaby Box運営者をお招きして、各国の実情をスピーチしていただく予定です。
お互いに学び合い、助け合うきっかけになれればと願い企画しました。

世界のBaby Box運営者を調べる中で、「赤ちゃんポスト」というキーワードでインターネット検索を行ったのが、平成27年11月でした。ヒットしたのが、『インターネット赤ちゃんポスト』と『赤ちゃんポスト.com』です。前者が大阪、後者が千葉の団体です。

私なりに両団体の事を調べてみたのですが、素人のできることには限りがありました。共通していたのは、インターネットを積極的に活用していることでした。また、日本人男性とウクライナ人女性との結婚あっせんに関係しているところも共通点でした。特別養子縁組あっせんに参入したきっかけは、結婚あっせんにあったのかもしれません。両団体の代表が、以前から知り合っていた事と、お互いに対立関係にあった事は意外でした。特別養子縁組あっせんを行う前からトラブル関係にあったようです。

闇の部分が多いという印象が強かったのですが、今回、番組で多くの部分が明らかにされました。インタビューの中で、千葉の代表者のコメントが印象的でした。

「そもそも福祉の仕事は俺の仕事じゃない と思っていますよね。マッチングしてお金をもらうというのが、まあ基本かなというか‥」

私としては強い違和感を覚えるコメントですが、社会的養護の世界にも新たな波が押し寄せてくるのを感じます。

「赤ちゃんを殺して、飛び降りたい」

平成27年10月、高知市で次の様な事件が発生しました。

・10月14日、生後10ヶ月の赤ちゃんが死亡。
死因は外傷性急性硬膜下血腫で、頭に強い衝撃を受けたことが原因。

・赤ちゃんの太ももに骨折の痕跡があり、手足数カ所に皮下出血の痕跡があった。

・児童相談所は、赤ちゃんが死亡する4ヶ月前には育児放棄状態である事を把握していた。

当時40歳の母親は、赤ちゃんの死亡後、精神状態が不安定で入院しましたが、今年9月に退院となり、警察の事情聴取を受け、11月逮捕に至りました。

母親には、育児に対する不安があって、
赤ちゃんポストに預けたい、できるなら殺してしまいたい。殺してどこかから飛び降りたい」と漏らしていたそうです。

私や妊娠相談室のスタッフにとって、ショックなエピソードでした。
赤ちゃんを「ゆりかご」に預けてもらえれば、赤ちゃんは犠牲者にならずに済み、母親も犯罪者にならずに済んだかも知れません。

「どうして、赤ちゃんを預けることができなかったのか?」

妊娠相談室では、カンファレンスの議題になりました。
母親は、赤ちゃんを支えきれず、限界状態でした。
ただ、その解決法として、赤ちゃんを「ゆりかご」に連れてくるにはハードルが高かったと思います。髙知から熊本まで赤ちゃんを連れていけるような精神状態ではなかったと思いますし、経済的にも厳しかったかもしれません。

赤ちゃんを殺すくらいなら、捨てるくらいなら、『ゆりかご』に預けて欲しい
そういう願いで「ゆりかご」の活動を続けていますが、全国で発生する赤ちゃんの遺棄や殺人を防ぎきれていないのも現実です。