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南アフリカ 黒人居住区の見学

久しぶりの南アフリカ報告です。

早くしなければいけないと思いつつ、日々の診療にかまけているうちにブログが置いてきぼりになってしまうのです😭

今回は黒人居住区の報告です。

正確には黒人居住区(昔は黒人のみの居住区だった)という事になるのでしょうが、実際は今でも住人のほとんどが黒人の街でした。

南アフリカにはアパルトヘイト政策の一環でできた黒人居住区がいくつもあります。アパルトヘイトは廃止されましたが、今も経済的に貧しい黒人が多く住む街があります。

私が訪問したのは、ヨハネスブルグのソウェト地区です。ここは南アフリカ最大の黒人居住区ですが、私がGoogle Mapで計ったところ、約23×14㎞ありました。熊本市中央区と東区を合わせた面積より広そうですし、東京の山手線の内側の2倍位はありそうでした。


ソウェトは貧民街と思っていたら、最初に案内されたのが、この高級住宅街です。
成功した黒人の居住区だそうです。ソウェトには貧民街も高級住宅街もあるわけです。


南アフリカではアパルトヘイト撤廃の後、黒人優遇政策がとられ、成功しリッチな黒人がいる一方、白人でもホームレス状態の貧困者がいるそうです。

富裕層居住区では、どの家も周囲に防犯用の電気柵が張り巡らされています。

高級住宅街の200m先には、ご覧のような集合住宅が並んでいました。
元は政府が黒人支援のために建てたものだそうですが、現在は民間に払い下げられている賃貸住宅です。
高級住宅街とのギャップを感じます。

細い電線がクモの巣のように張り巡らされていますが、これは契約せず勝手に電気を引き込む『盗電』の電線です。

こちらは貧民地区です。
バラック小屋が建ち並び、衛生環境も悪そうです。

一角には共用の簡易トイレが‥

信号停止した車窓から撮った写真です。
道路脇のゴミ捨て場から燃料になりそうな物を集めているのだそうです。
暖を取ったり煮炊きをするのに使うのでしょうか…

道端でニワトリの足の指を焼いて売っていました。
日本人は足の指を食用にする事がほとんどないのでドキッとします。

ツアーバスの運転手さん曰く、「この前乗せたアメリカ人が、窓を開けて鳥足を買い求めたんだ。危ないから、そんなことをしないように」

ソウェトでは、とにかくバスの外に出ないようにと釘を刺されました。
危険なんだそうです。
けれどソウェトで生活している人々からすれば、そんな言われ方は心外なのではなのかもしれません。
「安全な街ではないかもしれないけれど、現に私たちは毎日暮らしているし、言われるほどひどい所ではない」と…

けれど徹底的に警戒するからこそ、南アフリカの白人も日本人も犯罪に巻き込まれずに生活できているのも事実です。

黒人を危険視する白人と、被害者意識の強い黒人との間の溝を見てしまったような気がしました。両者が一体感を持って共生できる日は遙か先ではないかと感じた次第です。

 

ヨハネスブルグ ~世界で最も危険な都市!?~

ネットやガイドブックの情報では、南アフリカのBaby Boxがあるヨハネスブルグは相当危険な都市なのだそうです。戦時下にある地域を除けば、世界で最も危険な都市とも書いてあります。
日本の熊本とはあまりのギャップです。
熊本で犯罪に巻き込まれるなんて、日常にはまず考えられないですから。
熊本で空き巣、自動車・自転車の盗みはあり得ますが、強盗でも発生したら大ニュースです。
ちなみにヨハネスブルグでは1日の殺人事件死亡者が50名だそうです。

ヨハネスブルグを案内して下さった通訳のご夫妻(日本人)によれば、安全のためにバスや電車などの公共交通手段は使うべきではないそうで、ひたすら自家用車で移動しました。それも危険な地域を避けるために、わざわざ遠回りしてながらハイウエイを走りました。                                                                                                                                                    

前を走っている白いワゴン車は乗り合いタクシーです。
通称「ブラックタクシー」で運賃は安いものの、「絶対お勧めしない」と言われました。
降車後に同乗のお客に後を付けられて、強盗に遭うかもしれないそうで‥

近くで見ると、トヨタのハイエースで、親しみもわくブラックタクシーですが。

交差点付近では物売りの姿をよく見かけました。
彼はDJだそうで、自分で作ったCDを売っていました。
写真を撮らせてくれることを条件に1枚購入しました。
(いくらだったかは忘れました)
笑顔で元気そうですが、とても痩せているのが気になりました。

貧困は黒人だけではありません。
白人も道路の隙間を縫って物売りをしています。
南アフリカと言えば、アパルトヘイトで黒人が差別されているイメージが強いですが、近年はリッチな黒人もいればホームレスの白人もいるそうで複雑です。

南アフリカに行ってきました

遅くなって恐縮ですが、6月に南アフリカのBaby Boxを見学してきましたのでご報告します。

まずは久しぶりの国際線搭乗報告です。
利用したのはアラブ首長国連邦に本拠地を置くエミレーツ航空です。
関西国際空港⇒アラブ首長国連邦のドバイ国際空港⇒南アフリカ、ヨハネスブルグのタンボ国際空港と乗り継いでの長旅でした。

エミレーツ航空のCAさんは出で立ちからしてアラブの雰囲気いっぱいです。
ちなみに上の写真にはビジネスクラス、ファーストクラスの表示がありますが、実際に乗ったのはエコノミーです^_^;

機体はエアバスA380!
世界最大の旅客機を目の当たりにしてワクワクしながら撮影しました。
小学生の頃、熊本上空をジャンボジェットが飛来してきた時や高校生の頃コンコルドを見た時の興奮です。
同行した娘にはピンとこなかったようですが‥

往路は最前列に座らせてもらいましたので、エコノミークラスなのに足を伸ばせました。
ただ、この席は、「文書または図で示された緊急避難に関する英語の指示を読んで理解でき、口頭による乗務員の指示を理解できること」「他のお客様に対して情報を口頭で、適切に伝えることができること」が条件だそうで、「この席に座ってもだいじょうぶ?」と後ろめたい気持ち半分でした。

私の座席の前はご覧のように広い通路です。
右手前の階段からは2階のビジネス・ファーストクラスに通じています。

離陸前の操縦室はドアが開いていて、私の座席から正面にはコクピットが覗けました。
私は感激しながら見つめていましたが、これも娘には理解できなかったようで(T_T)

ドバイ国際空港に到着したのが午前4時でしたが、空港は人であふれていました。
まさに「眠らない空港」です。

空港内のホテルには、宿泊客でなくても利用できるシャワールームがあって、これを利用しました。関空⇒ドバイ10時間、ドバイ待機6時間、ドバイ⇒ヨハネスブルグ8時間と、計24時間の往路でしたので、シャワーは助かりました。
タオルもアメニティもしっかり完備で快適でした。
利用料金は4000円位だったと思います。
高いですが、無料のシャワーは空きがなかったですし、「ドバイは高い」と聞いていましたので、やむなしの選択です。

機内食は日本人に馴染みにくい内容でした。
(細長いお米が出たりなど)

美味しかったのは、ドバイ空港で食べたフイッシュ&チップスです。
イギリス料理ですが、白身魚(タラ?)の身がふっくらしていて良かったです。

以上、とりあえず旅路の報告です。
次は本題の南アフリカをアップします。

匿名出産と内密出産

慈恵病院が運営する「こうのとりのゆりかご」は、望まない妊娠をした女性が

赤ちゃんを遺棄したり、殺したりする事を防ぐためにスタートしたシステムです。

赤ちゃんを匿名で預けることができますので、主に妊娠や出産の事実を知られては困る女性が対象になります。

「こうのとりのゆりかご」のモデルとなったのはドイツのBaby Boxです。

そのドイツでは内密出産の試みが進められています。

また、フランスやオーストリアには匿名出産という制度もあります。

「こうのとりのゆりかご」の是非が議論になる時、内密出産を引き合いに出される事は少なくありません。そこで、今回は匿名出産と内密出産についてご説明したいと思います。

 

匿名出産

匿名出産とは、女性が自分の身元情報を明らかにしないまま病院で出産するものです。

ドイツ、フランス、オーストリア、イタリアなどで行われていますが、日本にはありません。フランスでは次のようなシステムを採用しているところが多いそうです。

まず女性が出産のために入院する際、本人の身分証書は封筒の中に入れ開封できないようにします。そして封筒を病院職員に預けます。この封筒は女性が死亡した場合にしか開封できない事になっています。お産が終わり、女性が退院する時に、封筒は未開封のまま返却されます。赤ちゃんの多くは養子として迎え入れられます。

赤ちゃんの母親の身元がわからないという点では、「こうのとりのゆりかご」と同じです。

ですから、「子どもにとって出自を知る権利が損なわれる」という事で反対意見もあります。

ただ、「こうのとりのゆりかご」では自宅やホテル、車の中など、病院外で人知れず出産する事が多々ありますが、匿名出産では病院で出産する訳ですから、出産の安全性は高まります。

内密出産

匿名で出産するという点で、内密出産は匿名出産と同じです。しかし、内密出産の場合、子どもが16になった時点で行政に実母の身元を照会することができます。

ただ、身元情報を明かすことで実母が危機的状況に陥る可能性がある場合には、実母が異議申し立てをする事ができます。この場合、情報を開示すべきかどうかについては家庭裁判所が判断を行います。

ドイツでは内密出産を社会制度として支えるため、2013年に法律が制定されました。出産費用は行政が負担します。

子どもが自らの出自を知ることができる可能性が残る点では、内密出産は匿名出産より評価されているようです。しかし、妊娠・出産の事実を絶対に知られたくない実母にとって、内密出産は必ずしも助けになりません。16年後には秘密が明かされるかもしれない心配がありますので。

日本では、「こうのとりのゆりかご」を廃止して内密出産に移行すべきとの意見が出ることもあります。次回のブログでは、この事を取り上げてみたいと思っています。

「中絶できない時期までほったらかしにしてっ!」

中絶政策転換、米大統領令で助成金禁止

トランプ米大統領は23日、海外で人工妊娠中絶に関する支援を行う民間団体への連邦助成金支出を禁じる米大統領令に署名した。女性の「選ぶ権利」を重視したオバマ前政権の政策を覆し保守色を鮮明にしたhttp://www.sankei.com/world/news/170124/wor1701240010-n1.html

トランプ大統領の言動が毎日のように世界を揺さぶっています。日本のマスコミでは、貿易問題、難民制限、安全保障などが大きく取り上げられていて、あまり目立ちませんが、先日トランプ氏の中絶反対姿勢を反映した大統領令が出されました。

トランプ大統領は、テロ容疑者への水責め拷問を復活させたいと言っている人です。こわもての大統領が人工妊娠中絶に反対するのは、多くの日本人にとって違和感があると思います。

日本社会は、中絶を好ましいものではないが、やむを得ない手段として受け入れていると思います。そして、年間18万件の人工妊娠中絶が合法的に行われています。

慈恵病院が取り組んでいる妊娠電話相談には、次のような相談が寄せられます。

「『堕ろさなければ別れる』と彼氏から言われ困っている」

「娘の付き合っている男がいい加減な人間なので中絶するよう勧めているが、娘が言うことを聞かない」

「産んで育てたいけれど、生活保護を受けているので言い出せなかった。役所に相談したら、『どうして中絶しなかったの?』と怒られた」

「責任を持って育てられないのなら中絶すべき」というのが、日本での一般的な考え方だと思います。

そんな中、「自分では育てられないけれど、大事な命だから、お腹の中の赤ちゃんを殺すことはできない」と、誰にも知らせずに臨月を迎えた女子高生もいました。
ただ、その行動に至る女性は少数派です。

米国民の8~9割がキリスト教徒とも言われています。
キリスト教、特にカトリック教会では、胎児を一人の人間とみなし、中絶を殺人行為として捉えています。中絶反対派の中には過激な人たちもいて、中絶クリニックを放火、爆破したり、クリニックの医師を射殺するケースまで発生しました。
(個人的には、胎児の生命を尊重する人が医師を射殺して良いのか疑問ですが)
トランプ大統領のニュース、改めて日本と米国の違いを考えさせられました。

「じゃあ蓮田は中絶をどう考えるのか?」

私個人は、中絶を希望する女性に反対できません。
中絶せずに産んでくれれば嬉しいです。
事情があって自分で育てられないなら、それでもいいのです。
特別養子縁組を提案します。
それで赤ちゃんの命が救われれば良いと思います。
しかし、妊娠継続と出産を拒否している女性に無理強いはできません。
頻度は低いものの、妊娠・分娩が母体に重大なダメージを与える事があるのを産婦人科医として経験していますので。
また、「育てられない赤ちゃん」が年間18万人、10年で180万人生まれたとき、その養育環境をどう整えるかという問題もあります。

悩ましい問題です。
目下のところは、中絶せずに産んでくれる女性の役に立てるよう、「こうのとりのゆりかご」、電話相談の活動に注力するしかないと思っています。