何人が捨てられ殺されているのか?

日本で何人の赤ちゃんが捨てられ、殺されるのでしょうか?

「こうのとりのゆりかご」に預け入れられる赤ちゃんの人数を想定する上で、その数字は重要です。しかし、現実には誰にもわからないものです。

「赤子の手をひねる」という表現に象徴されるように、殺人の中でも赤ちゃんの殺人が最も容易に行える事だと思います。そして完全犯罪が成立しやすい環境です。大人が殺されれば、その存在がなくなる訳ですから、「あの人がいなくなった」と騒ぎになります。しかし、人知れず妊娠し生まれた赤ちゃんについては、最初から存在自体を知られていないため、殺されても露見しにくいのです。

殺していなくても、赤ちゃんを人知れず遺棄するケースもあります。

自宅出産のケースでは、母親が、「産んだ赤ちゃんが死んでいた」と供述する事が少なくありません。立った状態で出産すると、落下した赤ちゃんが仮死状態になり、死亡に至る可能性があります。そのような赤ちゃんを地中に埋めてしまえば誰にもわかりません。ですから表に出ているよりも多くの殺人・遺棄が発生していることは間違いありません。

そこで、表に出ている数字なのですが、2つの統計があります。

ひとつは、警察庁生活安全局少年課が出している統計で、「出産直後の殺人(未遂を含む)および遺棄についての検挙件数」です。平成18年~27年では、年間6~17件となっています。ただ、これは検挙された件数ですから、露見していない事案や犯人がわからない事件が含まれていません。実際に発生している数字が何倍になるのでしょうか。

もうひとつの統計は、厚生労働省が調査した棄児数です。棄児は、「病院等の玄関先、敷地内、路上等に遺棄された児童であって、保護された時に親がわからない者」とされています。この調査は、平成18年度~20年度に行われたのですが、18年度27人、19年度55人、20年度49人でした。

これらの数字を見ると、少なくとも年間100人以上の赤ちゃんが遺棄され、殺されているのではないかと思います。

「こうのとりのゆりかご」の目的は、この数字を少しでも減らすことです。

赤ちゃんを犠牲者にしない、親を犯罪者にしない ために多くの人の支えで成り立っているシステムです。「こうのとりのゆりかご」が母子の悲劇を回避するために役立つよう、私たちは努力を続けていかなければいけないと思います。