ごぶさたしています。
久しぶりの投稿をさせていただきます。
熊本では3月23日に桜の開花宣言が出されました。
それから2日しか経っていないのに病院前の桜たちは早くも満開を迎えそうです。
病室の窓を開けると、「ホーホケキョ!」とウグイスの鳴き声も聞こえてきて、病院の周りには春があふれています。
今年は熊本の開花宣言が全国に先駆けて出されたそうです。
これから桜前線は北上していくのでしょう。
そう言えば、「まわりの人に知られずに出産したい」と言って北海道から来た女性が、北海道の桜開花はゴールデンウィークの頃だと言っていました。その頃、熊本では夏日になることも珍しくありませんから、同じ日本の中でもずいぶん違います。
彼女は私の娘くらいの年齢でしたが、熊本と北海道の違いを感じる話を聞かせてくれて興味深かったです。
「熊本の冬は冬じゃない、北海道の春です!暖房は暑くなるので要らない」
「雪のないクリスマスは初めです。地元ではいつもホワイトクリスマスだったから‥」
「熊本は名前に熊が付くし、『くまモン』もいるし、野生のクマがいると思っていました」(九州には野生のクマはいません)
彼女にとって熊本はとても遠い場所だったと思います。
当たり前ですが東京よりも大阪よりも遠い所ですから。
それでもお腹の中の赤ちゃんを無事に出産するために熊本に来てくれました。
その勇気や行動力とは裏腹に、彼女は痛々しいくらいに人に気を配り、笑顔を見せる人でした。そんな顔を見るたびに私は、「親御さんが慈しみながら育ててくれれば、彼女の人生はもっと喜びのあるものになっていたはず」と思い残念でした。
さて病院前の桜たちですが、これは私の亡き父が50年前に幼木を植えたものです。ここは当時病院の駐車場だった場所ですが、今はそこにマリア館が建っています。
すでに樹齢が40年近くになっていた桜たちは移植に耐えられないとのことで、建築の際に半分以上を伐採せざるを得ませんでした。
残った桜もマリア館の日陰になってしまい、父は花を咲かすことができないのではないかと嘆きました。
樹木が好きだった父にとって病院の桜は自らの歴史のようなものでした。
息子の私としても胸の痛む思いでしたが、心を封印して建築に舵を切りました。
幸い残った桜たちは元気に花を咲かせてくれています。
父もホッとしているのではないかと、毎年桜の花を眺めるたびにあの頃を思い出します。