タトゥーと陣痛、どちらが辛い?

当院では年間400人以上の妊婦さんが無痛分娩を選ばれます。

無痛分娩では麻酔チューブを背中や腰に挿入するのですが、その関係上、毎日のように妊婦さんの背中に向き合います。

時々タトゥーがあしらってある背中にお目にかかるのですが、中には背中いっぱいに描いてあるタトゥーもあります。背中を越えてお尻、太ももにまで広がっていたりもします。

タトゥーを入れるのは痛そうというイメージがありますよね。
立派なタトゥーを入れるために痛みを我慢できる人なら、陣痛の痛みに耐えられるのではないかと思うのですが、陣痛は別次元のようです。
陣痛の痛みに比べればタトゥーの痛みはずっと楽なのだそうです。

ちなみに私はタトゥーの上に麻酔針を刺す前に、「麻酔チューブを入れると、タトゥーにキズが入るかもしれません」とお断りするようにしています。
中学生の頃に読んだマンガ『ブラックジャック』の影響です。
この中に「イレズミの男」というエピソードがあります。

ヤクザの大親分がブラックジャックに癌の手術を依頼するのですが、大事なイレズミにキズを残さない事が条件でした。顔以外の全身にイレズミが施されているわけですから、イレズミにメスを入れなければ手術は不可能です。しかしキズが残れば7000人の子分たちがブラックジャックの命を取りに来ます…。

ブラックジャックは何度も読み返したマンガです。中学生の私は、タトゥーが持ち主にとってとても大事なものだということを刷り込まれました。
結果としてタトゥーの麻酔の前には先のお断りをするようになりました。
ただ、当の産婦さんは、「そんな事はどうでもいいから、早く麻酔をして陣痛の痛みを取ってください!」という気持ちのようです。