お説教

先日、「いらない赤ちゃん」、「いてもらっては困る赤ちゃん」を持つ女性の報告をしました。お読みになって、怒った人もいると思います。

「無計画」
「身勝手」
「無責任」

こんな言葉を投げたくなりませんか?

本来、親は子どもを愛し、守るべき存在のはずです。
我が子に対して「いらない」「いてもらっては困る」などのコメントは、親にあるまじき言動です。

ただ、慈恵病院の電話相談事例を振り返ると、実親に説教をしても、多くの場合はプラスに向かいませんでした。敬遠され、最後は音信不通になってしまいました。

頼るところもなく追い詰められると、人知れず赤ちゃんを遺棄したり、殺したりにつながりかねません。何より、赤ちゃんの命と健康を確保することが優先されます。

親には責められるべきところがあるかもしれませんが、赤ちゃんには罪がありません。実親ではない、他の大人が、愛情と敬意をもって保護し、育てる事ができれば良いと思います。仮に、実親にとっては、「いらない赤ちゃん」、「いてもらっては困る赤ちゃん」だとしても、他の大人にとっては、かけがえのない存在になり得ます

一方、実親の立場に立ってみると、彼女たちは既にダメージを受けています。
ほとんどの母親が事の重大さを理解し、後悔し、焦っているのに、わざわざ他人が追い打ちをかけるように怒るのは疑問です。
怒った人の義憤を晴らすことはできても、実親や赤ちゃんのためにプラスになったとは思えません。

もう一つ。
人には、それぞれ育った環境や能力があります。
実親のそれを理解せずに諭しても、心には響きません。
「こうのとりのゆりかご」の議論を行うとき、「できる人」、「恵まれている人」、「大きな失敗をしたことがない人」が、いわゆる正論をもって実親を批判することがあります。
しかし、私個人としては、「あなたにはできるかもしれないが、世の中には、あなたのようにできない人がいる」と言いたくなります。

もちろん、望まない妊娠の問題を放置していい訳ではありません。
根本的な解決に近づくには、性教育、貧困対策、防犯などが必要だと思います。
国家レベルの粘り強い対応が求められます。