いらない赤ちゃん

「いらない赤ちゃん」

いやな表現です。
そんな赤ちゃんが日本に存在することを信じたくない人もいると思います。

しかし、乳児の遺棄・殺人事件を追っていくと、この言葉を口にする母親が存在することを知ります。
愛媛県で5人の乳児遺体が発見された時の母親は、 「いらない子だったから」と供述していました。
静岡県で産んだ我が子をハサミで刺し殺した母親にとって、赤ちゃんは、「自由な生活の邪魔になる」存在だったそうです。

「いらない赤ちゃん」という表現はあんまりかもしれませんが、「こうのとりのゆりかご」や妊娠電話相談の現場では、「いてもらっては困る赤ちゃん」に遭遇する事は珍しくありません。

例えば、ダブル不倫で妊娠したケースです。父親にも母親にも家庭があり、それぞれに愛する子どもがいれば、赤ちゃんの存在は、それまで築き上げた家庭を壊しかねません。「赤ちゃんに愛情がないわけではないけれど、いてもらうと困る」のです。

経済的に苦しい母親は、「私が育てても赤ちゃんが不幸になるので、他の人に育ててもらった方が、赤ちゃんは幸せになれる」と、赤ちゃんを預ける理由を説明することがあります。すでに上の子ども達の生活が苦しいのです。

レイプによる妊娠では、「生まれてくる赤ちゃんを愛することができない、虐待するかもしれない」と悩みます。レイプ自体もダメージですが、お腹の中で動く赤ちゃんを感じながら、先々のことを考えるのは辛いと思います。

年間100万人の赤ちゃんが生まれる日本の社会ですが、一方で年間18万件の人工妊娠中絶が行われています。
「望まない妊娠」は多いのです。

いったい何人が望まれない赤ちゃんとして生まれてくるのか?
気の滅入る想像です。