私どもの病院では、たくさんの赤ちゃんが生まれ、育っていきました。その赤ちゃん、また育っていくお子さん、そして成人された方々に会いますと、命のひとつひとつが神様から頂いたかけがえのない尊いものだということを痛切に感じずにはおられません。しかし私たちの身近なところでも、18歳の少女が産み落としたばかりの赤ちゃんを殺して庭に埋めるという事件や、21歳の学生が汲み取り式トイレで赤ちゃんを産み落とし窒息させ6年の実刑判決を受けるなどといった痛ましい事件が発生しました。

 

神様から授かった尊い命を何とかして助けることができなかったのか?
赤ちゃんを産んだ母親もまた救うことができたのではなかろうか?
という悔しい思いをし、どうしても赤ちゃんを育てられないと悩む女性が、最終的な問題解決として
赤ちゃんを預ける所があれば、母子共に救われると考え開設しました。

 

~慈恵病院 理事長 蓮田太二「設立にあたって」より~

ゆりかごのモデル、ドイツのベビークラッペ(Baby Klappe)について
ドイツのベビークラッペ(Baby Klappe)視察の文言
生命尊重センターの誘いを受け、2004年ドイツの取り組を視察に行きました。視察施設はシュテルニ・パルク(保育園)、ノイケルン病院(公的病院)、ウァルトフリーデ(プロテスタント系病院)、聖ヨセフ病院(カトリック系病院)です。
シュテルニ・パルク保育園長の話では、ドイツでは母子を守るために下記の取り組みを行っているとのことでした。
ベビークラッペ
匿名で赤ちゃんを預けるシステムで、施設(保育園や病院など)の壁に扉をつけ、中に温められたベッドが置かれている。扉を開けて赤ちゃんをベッドに置き、ベッドの上に置かれている母親宛の手紙を取り、扉を閉めると再び開けることはできない。運営は(図1)のように赤ちゃんが預けられると、警備会社のブザーが鳴り、警備員が駆け付け赤ちゃんを確認すると、施設スタッフが赤ちゃんを連れ、小児科の病院で診察を受け、異常がなければ里親のもとで8週間育て、異常があれば入院となる。8週間以内に親が名乗り出なければ、全て実子として養子縁組される。重症の障害がある場合を除いて、障害のある赤ちゃんは普通の赤ちゃんの数倍の養子希望があるとのことであった。保育園の場合、運営に必要な経費は年間800万円以上かかり、寄付やチャリティーコンサートによって賄っている。
ドイツにおけるベビークラッペの運営
妊婦のかっとう相談窓口
出産に困難な事情があれば、妊婦葛藤相談所で相談し、相談員より社会的支援についての助言を受け、どうしても出産することができない場合は、相談所の証明書をもらって中絶手術を受けるというもので、必ず妊婦葛藤相談所で相談しなければならない。
注釈1)ドイツの基本法では、「胎児の権利」が謳われています。「人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し、保護することは、すべての国家権力の義務である」という内容が、そのまま胎児にも及んでいるのです。
匿名出産
自宅での出産は母子ともに危険であり、「匿名でよいから施設での出産を」と呼びかけている。施設で出産後は、母子が一緒にマザーチャイルドハウスで8週間まで生活でき、その間に自分で育てる、または養子に出すかを決め、そのほとんどの子どもが家庭で育てられている。ドイツで匿名出産し284名中、匿名を放棄した母親は265名(93.3%)、匿名を続けた母親は19名(6.7%)となっており、出生した284名の子どものうち、実の親が育てた子どもは148名(52.1%)、養子縁組となった子どもは131名(46.1%)、親が引き取らず、養子縁組もされなかった子どもは5名(1.8%)で、重篤な障害児であった。すなわち279名(98.2%)が家庭で育ち、5名が施設で育てられた。
*注釈2)日本には「子どもは親のもの」という考え方が強くあります。でもドイツは「子どもは社会のもの」という考え方をします。もちろん家庭教育もするのですが、社会が育て、社会が教育するという明確な意識があります。
*文献/高橋由紀子:ハンブルグの「捨て子の赤ちゃんプロジェクトの援助を利用した女性たち」 帝京大学26(1):88-106,2009
ドイツの母子を守る取り組みの流れ

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